きっかけ
先日 欲望の見つけ方 という本を読んだ。この本の中では、欲望には薄い欲望と濃い欲望の2種類があるということが述べられていた。
薄い欲望は他の人の欲望を真似たもの(他の人が欲しがっているものを欲しくなる)であり、濃い欲望は自分の内から湧き上がってくるものだという説明だった。
そして、自身の濃い欲望を特定する方法として "Motivation Code" という考え方が紹介されていた。
"モチベーション" という言葉は事あるごとに取り上げられ、書籍になり、ついには「モチベーションなるものは存在しない」という意見も見かけるようになった。ただ、そこで紹介されていた Motivation Code の考え方は自分にとって新鮮で興味が湧いたので、Motivation Code を紹介する本 を買って読んでみたり、社の福利厚生を利用して診断を受けてみることにした。
Motivation Code とは?
概要を簡単に説明すると、行動を起こす時の原動力は人それぞれで異なり、それらは27種類のモチベーションテーマに分類されるというものだ。テーマは「影響を与える」「完成させる」「他人と協力する」「正しいことをする」など様々である。27種類の中から最も強い傾向の3つを組み合わせたものが自分の Motivation Code であり、これは人生において不変である。
重要な点として、各テーマは好き嫌いややる気が生まれる傾向などではなく、喜びだったり楽しさを感じる傾向にフォーカスしたものになっている。書籍*1の中では、モチベーションはやる気の有無などではなく、タスクを楽しむことであるとされていた。タスクをこなすだけではなく、その作業にそれ以上の意味だったり喜びを感じることができるもの (= 前述のテーマ) が人それぞれに存在し、それが自分を突き動かしている。自分の Motivation Code を知ることは、何が自分の原動力になっているのかを理解することと同義である。
書籍の中では、27種類のテーマは似た要素同士 family という単位でグルーピングされていた。ただ、診断後のレポートでは family ではなく dimension という概念に置き換わり、粒度も異なるものになっていたので参考程度に🙏
The Visionary family
未来志向で、アイデアを実現したり何かに影響を与えることに動機付けされる。
- Achieve Potential — ポテンシャルを発揮する
- Make an Impact — 影響を与える
- Experience the Ideal — 理想を体験する
The Achiever family
何かを終わらせたり、挑戦をやり抜くことに動機付けされる。
- Meet the Challenge — 挑戦する
- Overcome — 克服する
- Bring to Completion — 完成させる
- Advance — 前進する
The Team Player family
他の人と一緒にゴールを目指したり、他者からの期待に応えたりすることに動機付けされる。
- Collaborate — 協力する
- Make the Grade — 基準に達する
- Serve — 他人の期待に応える
- Influence Behavior — 行動に影響を与える
The Learner family
何かを探究したり学んだり、それを他者に伝えることに動機付けされる。
- Comprehend and Express — 理解し、表現する
- Master — マスターする
- Demonstrate New Learning — 新しい学びを披露する
- Explore — 探求する
The Optimizer family
何かを効率化したり、整理することに動機付けされる。
- Organize — 整理する
- Make It Right — 正しいことをする
- Improve — 改善する
- Make It Work — うまくいくようにする
- Develop — 発展させる
- Establish — 確立する
The Key Contributor family
行動の中心にいることや他者との差別化に動機付けされる。
- Evoke Recognition — 関心を引く
- Bring Control — コントロールする
- Be Unique — ユニークである
- Be Central — 中心である
- Gain Ownership — オーナーシップを得る
- Excel — 優れている
以上のテーマの詳細は、"欲望の見つけ方" の著者である Luke Burgis さんが書いた記事 や mayasheth さんの記事 などから参照できる。ただし、どうやらテーマの分類分けそのものも必要に応じてアップデートされているようなのでご注意を... (診断後のレポートでは32個のテーマが記載されており、既存のテーマが細分化されたり別の名前に変わったりしていた)
MCode Assessment を受けてみた
Motivation Code は前述の公式のHPから MCode (Motivation Code) Assessment を受けることで診断できる。受けるためには $89.00*2 でライセンスを購入する必要がある。設問は全て英語だが、心配な人も DeepL 片手に挑めばほとんどが問題ないと思う。
受ける前の予想としては、Explore / Be Unique / Be Central / Excel あたりが強そうかなと思っていた。
受けてみた結果の上位5つがこちら。
- Comprehend and Express — 理解し、表現する
- Explore — 探求する
- Be Unique — ユニークである
- Excel — 優れている
- Maximize — 最大化する
まず、トップに Comprehend and Express が入ってきたのは驚いた。理解したものを他者に伝えるという行為は、言われてみれば好きだし、結果に繋がりやすいという感覚がある。今この記事を書いているのもこの特性から来るものだろう。他にも、下記のようなことが例として挙げられていて、自分が普段楽しいと思うこと(= あまり心理的負荷をかけずに取り組めること)ばかりだったので納得感が凄かった。
- 複雑なものを単純化して表現する
- 未知を既知に変えていく
- 自分が信じていることを実践し、模範とする
Explore / Be Unique / Excel あたりは予想通り上位だった。オンライン大学に通ったり、次から次へと趣味に没頭したり、ゲームはRPGよりも対人ゲームが好きだったりと思い当たることが多い。
最後の Maximize は前述の27のテーマに含まれていないものなので、きっとアップデートで追加されたんだろう。高い目標を設定した上で自分がやれることを最大限やる、みたいなものだった。これも違和感は無い。
上位5つのテーマについては、下記のような詳細な解説がレポートに含まれている。
- どういったシーンでその特性が現れやすいか
- どのような結果に繋がりやすいか
- どのような環境で成功しやすいか
- どのような環境で苦しみやすいか
- 特性のネガティブな側面
診断結果には上位5つだけではなく、他のものも全てランク付けされてレポートに含まれる。下の画像が全体の傾向を表すレポートで、良くも悪くも個人にフォーカスしたものが上位に来ている印象を受けた。
Do It Right (正しいことをする) が一番低くなっているが、これはあくまでも「"正しい" とされていることをすることに楽しさを見出しにくい」だけであり、「正しいことをしない」わけではないのでご留意を...(悪人ではないです)
16Personalities との比較
有名な性格診断である 16Personalities をやったこともある (ENTPだった) のだが、あちらは面白いで終わってしまい何かに活かすことは難しい印象を受けた。対して、Motivation Code は面白いだけで終わることなく、理想のポジションやキャリアを描いたり、そこへのアプローチを設計するのに役立てやすいと感じた。
この印象は、それぞれの診断の特性の違いから来るものだろう。16Personalities は個々の振る舞い (= インターフェース) にフォーカスしたものであるのに対して、Motivation Code は振る舞いの内発的動機付け (= ロジック) にフォーカスしたものである。自身の行動だったり考え方に影響を与えやすいのは後者であることは明確だ。
また、前述の Motivation Code の書籍には具体例を交えたより詳細な各テーマの解説があるので、そちらを読んだことにも起因していそう。
終わりに
人間が設問に答える以上、若干バイアスがかかった結果ではあるだろうが、意外な発見があったりしたので受けて良かったと思う。
ちょっと手を出しにくい値段設定ではあるが、興味がある人はぜひ MCode Assessment を受けてみるか、本を読んでみてほしい。福利厚生でこういったことを試せる弊社に感謝🙏
企業向けのプランなどもあったので、成長支援の一環として会社で取り入れてみるのも面白そう。内発的動機付けを明確に区別した上で強弱の順位を付けるというのは、個人的には好きな考え方だったので、今後日本でも広まっていくと良いなと思った。日本語対応が望まれる。